文化庁 文化観光note
文化財を活用した「ユニークベニュー」のケーススタディー集<参加型>(3)
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文化財を活用した「ユニークベニュー」のケーススタディー集<参加型>(3)

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歴史的建造物・神社仏閣・城跡・美術館・博物館などの独特な雰囲気を持つ空間を、イベントなどの会場にして、特別な体験を届けることができる「ユニークベニュー」の活用が進んでいます。

今回のnoteでは全国から集めたユニークベニューのケーススタディーや使用の際の注意点、法令などについて全4回の連載としてまとめました。3回目となる今回は、来場者が企画にジョインする形式を基本とする「参加型」の事例をご紹介します。

未指定文化財の拝殿で能楽や洋楽を披露

神社×芸能
関蝉丸芸能祭(滋賀県大津市)

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芸能の発展及び地域や大津市の活性化、観光の振興などに寄与することを目的とし、芸能の祖神として知られる蝉丸をまつる関蝉丸神社で「関蝉丸芸能祭」を開催。能楽や洋楽、郷土芸能など多岐にわたる演者が登場し、拝殿にて芸能が披露されました。2018年5月の4回目となる芸能祭には、18組の演者が出演し、付近の商店街でのちんどん屋によるパフォーマンスや参道での地元商店街連盟などによる出店も行われました。

実施日:2018年5月27日(日)(第4回)
会場:関蝉丸神社下社 拝殿
入場料:無料
来場者数:1,300人
主催:関蝉丸神社芸能祭実行委員会
予算:約100万円(企業協賛金、個人協賛金など)

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<背景>
関蝉丸神社は江戸時代に諸国の雑芸人を統括していたとされるが、老朽化のために境内の様子は昔とは様変わりしてしまっている。このことを知った一部の市民が中心となり、その現状を多くの人に知ってもらい、修復の機運を高めて修復費用を募るために芸能祭を開催することとなった。芸能祭開催に向けての個人協賛金の寄付に対しては、お返しとして絵馬やお守りを付与している。

<効果>
・芸能祭は毎年行われる祭として定着し、修復に向けた氏子や住民の機運も高まり、寄付も同神社に集まるようになった。
・本格的な修復整備に向けた募財活動のための奉賛会の立ち上げ準備や、関蝉丸神社修復委員会による境内の調査開始につながった。

<課題>
・運営スタッフの確保
・出演者控室・駐車場の確保、トイレの借用など
・雨天時の観客席の対応や、老朽化している建物の管理
・継続していくための運営資金

<配慮事項>
拝殿上で芸能を披露するために舞台上は靴履きを禁止。大人数での参加、大きな機材の使用、ダンスなど動きが激しい演奏演舞は不可とした。

町屋が美術館に変わる

町並み×アートフェスティバル
丹波篠山・まちなみアートフェスティバル2018(兵庫県篠山市)

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城下町の風情、その営み、暮らしを今に伝える丹波篠山市「河原町妻入商家群」の重要伝統的建造物群保存地区を中心とした約30軒の町屋を舞台に、立体映像・彫刻・絵画・墨・インスタレーション・映像・写真・美術工芸など約60名の作家がアート作品で空間を演出。2018年で10周年を迎えたアートをテーマにした町歩きイベントです。

実施日:2018年9月15日(土)〜17日(月)、20日(木)〜24日(月)
会場:丹波篠山市篠山重要伝統的建造物群保存地区を中心とした町屋など
入場料:無料
来場者数:約20,000人
主催:丹波篠山・まちなみアートフェスティバル実行委員会(地元団体(市役所・商工会など)、市民芸術家・町屋居住者などの個人により結成)
予算:兵庫県「県政150周年記念県民連携事業」助成、篠山市「まちなみアートフェスティバル補助事業」助成などを活用

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<背景>
重要伝統的建造物群保存地区に選定されたことを契機に、町並みを活用して地域を活性化する施策を実施できないかとの思いから検討がはじまった。篠山には陶芸家をはじめとする作家が居住していたことに加え、町屋とアートには親和性があるとの考えから、アートイベントを実施することになった。

<効果>
・町屋は個人のものだけではなく共有財産でもあるという意識が芽生え、このイベントを通じてもその意識は高まっている。
・このイベントの力だけではないものの、美術作家をはじめとする移住者やUターン住民も増えており、地域活性化に繋がっている。
・町屋6軒・作家10名の参加でのスタートだったが、すぐに賛同者も増え、翌年には町屋25軒・作家30名の参加となり、地域活性化に貢献するイベントへと成長した。


<課題>
一過性ではなく継続したイベントとして定着させるため、補助金に頼りすぎることなく、協賛企業の寄付を募ったり自主財源を充てる努力をするなど、費用面の工夫が必要。

<配慮事項>
会場となる町屋は日常使用している生活空間であるため、特別な演出をすることなく普段どおりの場所を生かしながらアートを展示することを心掛けた。

重要文化的景観の棚田を染める幻想的灯火

棚田×ライトアップ
たたらの灯(島根県奥出雲町)

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たたら製鉄に用いる砂鉄を採取した跡地を再生した棚田を1万本のLEDライトによりライトアップ。期間中は田んぼアートや御神木の下でのコンサート、ワークショップ、棚田で収穫された新米や地元特産品などを販売する収穫祭など、さまざまなイベントを併せて実施しました。また、棚田はたたら製鉄をテーマとした日本遺産の構成文化財ともなっており、日本遺産の風景をテーマとした写真コンテストも行っています。

実施日:2018年10月13日(土)〜11月17日(土)
会場:奥出雲たたら製鉄及び棚田の文化的景観
入場料:200円
来場者数:3,000人
主催:TataRart実行委員会、奥出雲町地域活性化プロジェクト(実行委員会は、地元自治会や郵便局社員、ボランティアなど総勢100名からなる)
予算:400万円(企業からの寄付、クラウドファンディング)

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<背景>
たたら製鉄が営まれてきた奥出雲町追谷地区の棚田が、2014年に中国地方で初めて国の重要文化的景観に選定。2016年には日本遺産の構成文化財に認定された。これを機に棚田をPRし、過疎化・少子高齢化で悩む当地区の交流人口を増やし、活性化させていくためのイベントを実施した。

<効果>
・文化的景観とライトアップの相乗効果により景観の美しさを伝えることができ、集客につながった。
・写真コンテストのテーマを日本遺産の風景としたことにより、話題性があり、文化財の美しさを知ってもらうよいきっかけとなった。
・写真コンテストではSNSによる参加枠を設けることにより、幅広く参加を募るとともに発信することができた。

<課題>
LEDライトの設置回収に非常に労力がかかるが、集落が高齢化しており、今後は他地区からの多くのボランティアスタッフが必要となってくる。

<配慮事項>
・イベント実施の際は、文化財に影響を及ぼさないよう、町の文化財担当者と調整を行った。
・棚田は個人所有のため、所有者にライトアップでの利用許可を確認した。
・近隣の小学校やカフェに協力してもらい、駐車場を借用した。
・ライトアップ時は道路を通行止めとするため、駐車場から会場へのシャトルバスを運行した。

特別天然記念物でスポーツイベント

景勝地×スポーツイベント
秋吉台カルストTRAIL RUN(山口県美祢市)

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雄大で美しい景観を持つ日本最大級のカルスト台地「秋吉台」国定公園を舞台に実施した、当地域におけるスポーツツーリズムの先駆けです。エイドでは地元の特産品を提供するなど、地域一体で美祢市ならではの「おもてなし」を実施しました。イベント参加費の一部は秋吉台の環境保全活動などに利用され、滞在時間延長による宿泊施設などへの経済効果をあげるために大会前日にはセミナーや前夜祭を実施しました。

実施日:2018年10月14日(日)
会場:秋吉台(特別天然記念物)
参加料:ロング:8,800円 / ウィメンズ:5,300円 / キッズ・親子ペア:2,000円
参加者数:約700名
主催:秋吉台カルストTRAILRUN実行委員会(一般社団法人美弥市観光協会、美称市、美称市商工会、NPO法人などにより構成)
予算:約500万円(参加料及び協賛金など)

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<背景>
人気スポーツとしてトレイルランニングが急成長している中、ビギナーから愛好者まで満足できる秋吉台のトレイルを全国にPRし、秋吉台を走ることにより、自然保護について考えてもらう機会として捉えている。秋吉台地域への新たな観光客の創出とリピーターの構築、併せて秋吉台のブランディング化につなげ、観光交流人口の拡大への期待をこめて実施した。

<効果>
・秋吉台の観光客数が減っている中、イベントを通じて、リピーターが増えた。
・30都道府県からの参加により市内の宿泊者は約100名となり、宿泊施設や観光施設への経済効果があった。

<課題>
・電源が確保できない
・天候(雨天時など)によるコースの変更

<配慮事項>
エントリー者数の制限や、博物館や研究会などの文化財の専門家によりイベント前後にモニタリング調査(地面が削られていないか、草が剥げていないかなどを目視で確認)を実施し、活用と保存のバランスを保つようにした。
草刈りなどのトレイルの整備は、秋吉台の植物に配慮した時期に実施した。

名護屋城跡並陣跡にて野外レストラン

城跡×野外レストラン
DINING OUT ARITA & with LEXUS(佐賀県唐津市)

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特別史跡名護屋城跡並陣跡にて佐賀県の食材を活用した食と器を味わうイベント。一流の料理人がその土地の食材を新しい感覚で切り取った料理を、その土地を最も魅力的に表現できる場所と演出とともに、五感すべてで味わっていただく。名護屋城跡の馬場レストラン施設及び仮設トイレを設営。本丸でのレセプションの後、客席にて食事を提供し、同時に篠笛などの演奏も行った。

実施日:2016年10月8日(土)〜10日(月)
会場:名護屋城跡並陣跡
入場料:143,000円〜(宿泊、ディナー及びツアーがセットになったプラン)
来場者数:110名
主催:株式会社ONESTORY
予算:約2,200万円

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<背景>
2016年に有田焼が創業400年を迎えたことを契機として、佐賀県では有田焼創業400年プロジェクトが展開された。有田焼は文禄・慶長の役をきっかけに技術が入ってきたという歴史があり、本プロジェクトを名護屋城跡で実施することとなった。こうした佐賀県の焼き物の源流を辿り、これからの器のあり方を盛り付けられる料理とともに表現し、有田焼のさらなる魅力を国内外に発信するため実施した。

<効果>
・イベントを通じて、佐賀県の焼き物の歴史や舞台となった名護屋城跡を参加者に知ってもらうきっかけとなった。
・「場所」「器」「食」という複合的な要素を融合させることで、参加者が歴史や文化、それらを育んだ自然や景観を体感でき、歴史的背景にまつわる物語や地域の魅力を発信し普及することができた。

<課題>
・市教育委員会や関係機関の文化財専門員などと、さらに綿密にイベント実施計画について相談し、文化財の保存について理解した上で進めていく必要がある。
・夜間や野外のイベントでは事故や荒天が予想されるため、参加者・関係者の安全確保が肝要。

<配慮事項>
現状変更申請の提出前に文化財担当者に実施内容を伝え、現地確認や搬入出時の立会いを行ってもらった。
仮設物設置場所や搬入ルートなどの調整、ゴムシートなどでの地面の養生を講じ、特別史跡内での掘削や盛土などはしないように留意した。
一般入城者に対しては通行経路の表示を行い、スタッフによる誘導を実施。夜間は常駐警備を配置した。雨と強風に見舞われた日は、レセプション用テントは解体して保管した。


冊子としてまとめた「文化財を活用したユニークベニューハンドブック」には、ほかにも文化財を活用したユニークベニューの事例が掲載されています。興味がある方はぜひダウンロードしてご覧ください。連載の最後となる第4回では、文化財をユニークベニューでイベント活用する際の関係法令や届け出に関してまとめていきます。

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