文化庁 文化観光note
ふるさと納税、企業支援、PFI形式/コンセッションについて学ぶ:文化財保護のための資金調達ハンドブック(3)
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ふるさと納税、企業支援、PFI形式/コンセッションについて学ぶ:文化財保護のための資金調達ハンドブック(3)

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日本の各地域には、歴史文化を支える多種多様な文化財が多数存在しています。しかし、過疎化や少子高齢化などを背景として「文化財継承の担い手」が不足しており、各地域の文化財は滅失・散逸等の危機に瀕しています。

所有者の努力だけでは文化財の維持・継承は困難であり、いま行政等の支援に加えて地域社会全体で各地域の歴史文化を支える仕組みが求められています。

全3本となる本連載の第3回では、文化庁地域文化創生本部が全国の自治体担当者や文化財所有者に向けて作成した「文化財保護のための資金調達ハンドブック」から、「ふるさと納税」「企業支援」「PFI形式/コンセッション」による資金調達についてご紹介します。

(※記事公開後、連載第二回へのリンクを追加)

「体験型ふるさと納税」の可能性

ふるさと納税とは、生まれ故郷や応援したい自治体(都道府県・市区町村)に寄附をすると税金の一定額が控除され、さらに寄附先の地域からお礼の品がもらえる新しい地域応援の仕組みです。

都会と地方の税収格差を是正して地方創生に繋げることや、税制を通じてふるさとへ貢献することを目指した仕組みとして導入されました。自分の選んだ自治体に寄附を行った場合、寄附額のうち2,000円を超える部分について所得税と住民税から原則として全額が控除されます。

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近年では、従来のふるさと納税の仕組みだけでなく、使い道をより具体的にプロジェクト化する「ガバメントクラウドファンディング」や「体験型のふるさと納税」なども増えています。

従来のふるさと納税と比べて、今まで以上に「文化財保護」という使い道に特化したかたちで募集ができたり、体験型のふるさと納税を通じて地域の伝統や文化を知ってもらう機会になったりと、より文化財保護と親和性が高いふるさと納税が登場しています。

まず、ガバメントクラウドファンディングは寄附金の「使い道」をさまざまに指定できるため、自治体が考える「想い」に共感し、その意思をもって寄附をすることができる制度です。自治体によっては「文化財保護」や「伝統の継承」を寄附の使い道として設定することも可能です。

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続いて、体験型ふるさと納税とは、返礼品を地域産品等のモノにするのではなく地域体験等のコトにしたものです。文化体験や歴史講座をはじめ、農泊、各地の食事、バーベキュー、スキー、サイクリングなどのその土地でしかできない体験プランを返礼品として提供するふるさと納税の形式です。

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「企業版ふるさと納税」の制度改正

文化財保護のための企業支援については、寄附、企業のCSR活動、ネーミングライツ契約による支援など、さまざまなものが考えられます。今回は、2020年度に制度が改正された「企業版ふるさと納税」について紹介します。

企業版ふるさと納税とは、志ある企業が寄附を通じて地方公共団体の行う地方創生の取組を応援した場合に、税制上の優遇措置が受けられる仕組みです。

損金算入による軽減効果(寄附額の約3割)と合わせて、最大で寄附額の約9割が軽減され、実質的な企業の負担が約1割まで圧縮。ほかにも認定手続きの簡素化が図られるなど、より使いやすい仕組みとなります。詳細は「企業版ふるさと納税ポータルサイト」でご確認ください。

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「官民連携事業」の手法を、文化財にも導入

「コンセッション」とは利用料金の徴収を行う公共施設について、施設の所有権を公共が有したまま施設の運営権を民間事業者に設定する方式です。
公共と民間事業者が連携して公共サービスを提供する手法を幅広くPPPといいます。これはPublic Private Partnershipを略したもので、官民パートナーシップ、官民連携事業などとも呼ばれます。文化財の分野においても、公共が所有する民家などの文化財建造物を指定管理者制度により運営する方法や、包括的民間委託による実施が進められています。

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そのなかでもPFI(Private FinanceInitiative)方式は民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して公共施設等の建設、維持管理、運営等を行う方式であり、効率的、効果的な社会資本の整備や国民への安価で良好なサービスの提供を目的としています。これは1999年の「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(通称「PFI法」)」に基づくものです。

PFI法には、2011年の改正により公共施設等運営権(コンセッション)制度が導入されました。2019年度に改定された内閣府の「PPP/PFI推進アクションプラン」では、民間の経営原理を導入するコンセッション事業の活用が推進されています。

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「修理観光」から「入域料まで」

文化財保護のための資金調達の方策としては、これまで説明してきた方策以外にも「指定管理者制度」「不動産信託」「修理観光」など、さまざまな方策があります。

まず「指定管理者制度」は、総務省によれば「住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設である公の施設について、民間事業者等が有するノウハウを活用することにより、住民サービスの質の向上を図っていくことで、施設の設置の目的を効果的に達成するため、2003年に設けられた」制度です。

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続いて、不動産信託のうち「信託」とは委託者が一定の目的に従い財産の管理・処分をさせるため、第三者( 受託者)に財産権を移すことを指します。不動産信託とは、財産を土地や建物などの不動産に特化した信託です。委託者を代位し受託者(信託会社等)が財産を管理し、財産から得られる収益を委託者に配当する仕組みです。

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ほかにも「修理観光」という制度があります。修理現場を観光客に公開することを指すもので、文化庁では2016年3月に策定された「明日の日本を支える観光ビジョン」を受け、文化財を貴重な地域・観光資源として活用するための「文化財活用・理解促進戦略プログラム2020」を策定しました。当プログラムの中には「修理現場の公開(修理観光)や、修理の機会をとらえた解説整備を推進する」との記載があります。

また、「宿泊施設活用」は「文化財活用・理解促進戦略プログラム2020」の中には新たな用途への活用等として「宿泊施設やユニークべニュー利用に適した文化財等をリストアップし、観光庁と連携してPRする」との記載もあります。文化財を新たな用途で活用する取組は各地で広がりを見せており、特に当初の役割や目的を果たせなくなった建造物を宿泊施設・飲食施設・観光関連施設として活用し、文化財の保存と地域活性化の両立を目指している事例は増加傾向にあります。

ほかにも「入域料」という考え方があります。文化資源や自然資源などの保全や整備等を目的に、地域に入域する際に支払いを求められる入域料、法定外目的税、協力金、募金等のことを指します。伝統的建造物群保存地区や文化的景観などのエリアで選定されている文化財での活用が多くなっています。


本記事ではふるさと納税、企業支援、PFI形式/コンセッションなどについて説明しました。各資金調達方法の具体的なケーススタディについては、冊子としてまとめた「文化財保護のための資金調達ハンドブック」をダウンロードしてご覧ください。

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