文化庁 文化観光note
指定寄附⾦制度、クラウドファンディング、助成団体、地域活性化ファンドからの投資について学ぶ:文化財保護のための資金調達ハンドブック(2)
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指定寄附⾦制度、クラウドファンディング、助成団体、地域活性化ファンドからの投資について学ぶ:文化財保護のための資金調達ハンドブック(2)

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日本の各地域には、歴史文化を支える多種多様な文化財が多数存在しています。しかし、過疎化や少子高齢化などを背景として「文化財継承の担い手」が不足しており、各地域の文化財は滅失・散逸等の危機に瀕しています。

所有者の努力だけでは文化財の維持・継承は困難であり、いま行政等の支援に加えて地域社会全体で各地域の歴史文化を支える仕組みが求められています。

全3本となる本連載の第2回では、文化庁地域文化創生本部が全国の自治体担当者や文化財所有者に向けて作成した「文化財保護のための資金調達ハンドブック」から、「指定寄付金制度」「クラウドファンディング」「助成団体」「地域活性化ファンドからの投資」による資金調達についてご紹介します。

「指定寄附⾦」と一般の寄附金は何が違う?

指定寄附⾦制度とは、「公益法人等が行う広く一般に募集する」寄附金であり、「教育又は科学の振興、文化の向上等の公益の増進に寄与する」ための支出として位置づけられています。また、緊急を要するものに充てられることが確実なものとして、財務大臣が期間及び募金総額を定めて指定したものに対する寄附金のことを指します。

文化財に対する指定寄付金を考える際、国宝・重要文化財(建造物・美術工芸品)など国指定文化財を修理する場合に、文化財の所有者(=修理事業者)が広く一般から寄附を集め、修理費の一部に充てることがあります。

その際に指定寄附金でない一般的な寄附金の場合、税制上の取扱いは、個人の所得税については優遇措置はなく、企業等の法人税については、一定限度の寄附金が必要な経費として認められることになっています。

一方で、財務大臣が「指定寄附金」として指定した寄附金や国または地方公共団体に対する寄附金などについては、寄附者は所得税または法人税の優遇措置を受けられます。そのため、「指定寄附金」は一般の寄附金に比べて募集が容易となる側面があります。

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指定寄附金の申請をするには、必要書類を作成・準備し、都道府県教育委員会を通じて文化庁に提出することが必要です。申請にあたっては、寄附金の下限額、寄附の想定などの条件があります。指定寄附金を考えている団体は、まずは都道府県・市町村教育委員会の文化財行政担当課にご相談ください。

クラウドファンディング4つの類型

「クラウドファンディング」とは、一般的にはプロジェクトの起案者がインターネット上で不特定多数からお金を集められる仕組みのことを指します。

クラウドファンディングには主に「寄附型」「購入型」「融資型」「投資型」の4つがあり、資金を集める方法としては寄附や何かとの交換、融資する場合までさまざまなものが存在します。主に文化財保護に使われているのは「購入型」と「寄附型」です。

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事業収入、助成金、クラウドファンディングの理想的なバランスは?

近年、お金と共に「思い」を伝えたい人も増えており、多くのクラウドファンディングのサイトでは、プロジェクト毎に「支援者からの応援コメント」の欄が存在します。このコメント欄には多くの人からの励ましの言葉が書かれるため、実行者としては募集中はもちろんのこと、その後の活動の励みになり精神的にも支えられるという側面も。また、支援者が支援するかどうかの参考に見ていることも多く、サイトの中でも閲覧回数の多いページである傾向があります。

また、クラウドファンディングで全ての事業費を賄うことは難しいものの、できれば入場料などの事業収入・助成金・クラウドファンディングを1/3ずつで賄っていくのが理想であり、今後は広い視点での資金調達が必要になると考えられます。

一定のお金をクラウドファンディングで集め、支えてくれる人も集まったために、ここの部分の助成を受けたいという計画的な申請が有効だった例も存在します。また、クラウドファンディングを1年くらい間をあけながら継続的に行い、事業を進めたことで、そのうちの半分はリピーターがファンとして支援してくれたという実例もあります。

企業からの基金拠出による「助成団体」

助成団体とは、自らは事業や研究などは行なわず、他の者が行なうそれを資金的に援助する団体のことを指します。財団法人の中でも研究、施設、出版、会議開催、研究者招請・派遣などへの助成事業や表彰事業、奨学事業などを行なう団体を指し、その多くが企業からの基金拠出によるものです。

日本の長い歴史の中で生まれ、育まれ、今日まで守り伝えられてきた建造物や美術工芸品などの文化財を修理し、地域の伝統芸能等を伝承し、あるいは文化財について調査・研究し、後世に伝えていくために、文化財の修理や保存・伝承、調査・研究などに関するさまざまな助成・助成団体が日本には存在します。

展示関係では「芸術展示活動」「芸術文化部門・美術展覧会」「若手芸術課の育成、国際交流」などを対象として、独立行政法人日本芸術文化振興会や公益財団法人花王芸術・科学財団などが存在します。

また調査・研究・保存及び活用関係では、下記が対象となります。
・文化財の保存修復に係る調査研究
・芸術分野の調査研究
・自然・歴史環境の保全活用に係わる活動や研究
・絵画等、美術史、美術館学に関する調査研究
・人文科学、自然科学の分野における調査研究
・地域文化に関わる研究
・博物館での資料の保存技術、展示方法に関する研究

実施団体としては、公益財団法人文化財保護・芸術研究助成財団や公益財団法人サントリー文化財団などが存在します。

2013年に誕生した官民ファンド「REVIC」とは?

「株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)」とは、地域経済・産業の成長や新陳代謝による地域経済の活性化を目的に、株式会社企業再生支援機構を改組して2013年に誕生した官民ファンドです。

近年、地方銀行や信用金庫とREVICが共同で運用する地域活性化ファンドからの投資により、歴史的建造物などを観光資源として活用する事例が各地で出てきており、文化財の活用が保存につながる事例として注目を集めています。

REVICの目的は、地域経済の活性化や中小企業者等の事業再生が持続的に行われるようにしていくことです。さまざまな分野の専門家が集まるREVICの役割は、蓄積した地域活性化や再生のノウハウによって地域金融機関とともに事業者ごとに最適なソリューションを提供することであり、最終的には地域金融機関にそれらのノウハウを移転・定着させることにあります。

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事業運営にあたっては「先導的な地域活性化・事業再生モデルの創造」「地域活性化・事業再生ノウハウの蓄積と浸透」「専門人材の確保と育成及び地域への環流」の3つを基本方針に掲げ、これらに基づき地域金融機関の地域活性化の取組を支援しています。手がける業務にはいくつかの種類が存在しますが、文化財と深く関わるのは、ファンドの運営を通して地域経済の活性化に貢献する「活性化ファンド業務」です。

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観光産業に特化したファンドも

活性化ファンドのうち「観光産業支援ファンド」は、観光産業に特化したファンドであり、新たな観光資源の掘り起こしや施設の多様化を通じて変化に対応しようとする地域の観光事業者を、資金と人材の両面からサポートしています。

地域の魅力やアイデンティティを形成している指定・未指定の多様な文化財は観光資源として活用されることが期待されており、歴史的建造物をホテルやレストランにリノベーションする際の資金調達などに、このファンドからの投資が利用されています。

そのメリットとしては、ファンドを共同で運営することでREVICが持つノウハウを金融機関等に移転し、金融機関等の支援能力向上に貢献することで、各地域における事業者に対する支援の充実が期待でき、地域の人材創出に寄与することが挙げられます。

事業化が難しいとされてきた歴史的建造物等の再生事業に対しても、地域活性化ファンドと地域金融機関が協調投融資を実行し、経営課題解決においても支援を行うことで地域活性化のための事業モデルが創出されることが挙げられます。

課題としては、観光産業支援ファンドが対象とできる地域には一定の制約があることや、活用する文化財の価値を担保するために投資を受ける事業運営者に文化財の取り扱いに長けたヘリテージマネージャー等が関与するような体制の構築が望まれることが挙げられます。


本記事では指定寄附⾦、クラウドファンディング、助成団体、地域活性化ファンドからの投資について説明しました。各資金調達方法の具体的なケーススタディについては、冊子としてまとめた「文化財保護のための資金調達ハンドブック」をダウンロードしてご覧ください。連載の第3回では、「ふるさと納税」や「企業支援」など、資金調達におけるさらなる実践例をご紹介していきます。

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