文化庁 文化観光note
文化財を活用した「ユニークベニュー」のケーススタディー集<劇場型>(2)
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文化財を活用した「ユニークベニュー」のケーススタディー集<劇場型>(2)

文化庁 文化観光note

歴史的建造物・神社仏閣・城跡・美術館・博物館などの独特な雰囲気を持つ空間を、イベントなどの会場にして特別な体験を届けられる「ユニークベニュー」の活用が進んでいます。

今回のnoteでは全国から集めたユニークベニューのケーススタディーや使用の際の注意点、法令などについて全4回の連載としてまとめました。連載2本目となる今回は、観客が来場する形式を基本とする「劇場型」の事例を全国から集めてご紹介します。

フランスをモデルに特別史跡で歴史舞台劇

城跡×劇
市民創作「函館野外劇」(北海道函館市)

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特別史跡五稜郭で、市民が函館に関連する歴史をテーマに野外劇を行う夏のイベント。コロポックルの神話の時代から新幹線の開通する現代までを14の場面で繰り広げられるスペクタクル。

五稜郭の土手や堀を利用して作られた舞台と、堀を隔てた観客席前を主な舞台として使用します。およそ300人の出演者と、演出スタッフ、衣装、受付など100人の裏方の総勢400人を越える市民が参加しています。

実施日:2018年7月13日(金)8月11日(土)(第31回)
会場:五稜郭跡
入場料:大人1,500円、高大短専800円、小中400円
来場者数:3,000人
主催:NPO法人市民創作「函館野外劇」の会
予算:1,800万円(企業・個人の会費、協賛、広告、寄付、グッズ販売など)

<会場>
五稜郭跡
指定等状況:特別史跡
面積など:堀の内側 約125,500m²
所在地:北海道函館市五稜郭町本
所有者名:函館市
公開状況:公開(公園内無料)

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<実施体制>
主催NPO法人市民創作「函館野外劇」の会
1987年発足。1999年にNPO法人へ。野外劇のオーディションや演技指導などの運営だけでなく、実際に会員も出演する。

野外劇に出演するだけでなく見て歴史を学ぶことで市立函館高校が生徒に単位を与える取組への協力や、外国人のためのプログラムの多言語化なども行っている。

<背景>
1988年に世界的に有名なフランスの野外劇から火種をもらい、五稜郭を舞台に、ダイナミックな函館地方の歴史を題材とする市民創作「函館野外劇」を開始した。その後、多数の市民ボランティアが参加する国内最大規模の市民創作野外劇に成長し、数々の受賞とともに「歴史とロマンの街・函館」にふさわしい地域文化活動と、新しい観光資源として全国的にも高く評価されている。

<効果>
野外劇を史跡地内で行うことで、文化財の毀損を心配する人もいるが、イベントを30年以上継続して行ってきた結果、利用してこそ五稜郭の価値を知ってもらうきっかけになる。
このイベントを通じて、市民や市内の小中高生たちが野外劇に出演したり、見たりすることで、函館の歴史を知るきっかけとなり、歴史や地域に愛着を持つようになった。

<課題>
出演者・裏方・観客の高齢化が進んでいること。

<配慮事項>
・史跡であることを考慮し、照明塔などは杭を打たず、コンクリートの重石で押さえた。
・観光客も来ることを考慮し、景観に配慮した設備を心掛けた。
・劇を行う際に音が出るので、事前に計測を行い、周辺住民に配慮した。
イベントの内容を事前に市の担当者に相談し、調整した。

近代化遺産と最新映像技術の融合

近代化遺産×プロジェクションマッピング
3Dプロジェクションマッピング「BONA PPÉTIT!」(茨城県牛久市)

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東日本大震災から復旧した重要文化財「シャトーカミヤ旧醸造場施設」を会場に、牛久市初の大規模3Dプロジェクションマッピングを実施。重要文化財の活用を図ると同時に「ワインの街うしく」の魅力を市内外に発信しました。また、今回のイベントでは「シャトーカミヤ旧醸造場施設」を核とする「日本の近代化と国産ワイン」をテーマにした日本遺産認定への取組を広くアピールすることも目的としていました。

実施日:2017年3月10日(金)〜11日(土)
会場:シャトーカミヤ旧醸造場施設(重要文化財)
入場料:無料
来場者数:約6,000人
主催:牛久市文化遺産活用実行委員会
予算約:約1,500万円(総務省「地方創生加速化交付金」を活用)

<会場>
シャトーカミヤ旧醸造場施設
指定等状況:重要文化財
面積など:煉瓦造、建築面積3085.2m²
所在地:茨城県牛久市中央三丁目20番地4
所有者名:オエノンホールディングス株式会社
公開状況:公開(無料、旧事務室、旧貯蔵庫内への入館は不可)

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<実施体制>
主催牛久市文化遺産活用実行委員会
牛久市教育委員会文化芸術課が事務局となり、文化財保護審議会、牛久市文化協会など市内関係団体から委員が選出されている。

<背景>
2016年度から日本遺産認定を目指すことになり、観光施設としてだけではなく文化財としての牛久シャトーをPRしていく必要性を感じていたところ、プロジェクションマッピングのアイデアが挙がった。同時期に市の「ワインと食」による観光振興事業が地方創生加速化交付金(総務省)で採択され、その中の取り組みのひとつとして実施することとなった。

<効果>
・約6,000人の来場があり、牛久市と牛久シャトーをPRするよいきっかけになった。
・市外からの来場もさることながら、市民から「また実施してほしい」という声が多く寄せられた。
・文化財の所有者は民間だが、東日本大震災による災害復旧の際に深い関わりがあり、今回のイベントについても深い協力体制をとることができた。

<課題>
電源確保のための発電機での対応や、鮮やかな映像を投影するために光量が多いプロジェクターを使用するなど、費用面での課題が多かったこと。

<配慮事項>
・映像投影の際の透過対策として窓の内側に棒を用いて白い布をかける際は、市の職員が立ち会い、壁に当たる部分にクッション材を使うなど、跡が残らないように工夫した。
・夜間の設営や上映があり、また無断駐車が見込まれたため、近隣の住宅への実施周知チラシの配布や近隣店舗への説明などを行った。

世界文化遺産・富岡製糸場で将棋棋戦

世界文化遺産×将棋
第3期叡王戦決勝七番勝負第4局富岡製糸場対局(群馬県富岡市)

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世界文化遺産である富岡製糸場の重要文化財「首長館」で、株式会社ドワンゴおよび公益社団法人日本将棋連盟が将棋棋戦「第3期叡王戦」を実施。対局開始から終了まで、動画投稿サイト「ニコニコ生放送」により生中継され、約17万人がインターネットを通じて対局を観戦しました。また、前夜祭が近隣の市町村で行われ、宿泊をした多くの人が、将棋だけでなく富岡製糸場の他の施設も見学しました。

実施日:2018年5月26日(土)
会場:旧富岡製糸場首長館 
主催:株式会社ドワンゴ公益社団法人日本将棋連盟

<会場>
指定等状況:重要文化財
面積など:9170.3m²
所在地:群馬県富岡市富岡1番地
所有者名:富岡市
公開状況:非公開

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<実施体制>
主催:株式会社ドワンゴ、公益社団法人日本将棋連盟

富岡市は、富岡製糸場への会場協力交渉、新庁舎の会場協力(大盤解説会)、市長の番組出演、市報への情報出しなどを全面的に協力。

<背景>
株式会社ドワンゴは、将棋棋戦「電王戦(人間vsAI)」や「叡王戦」を、歴史的な場所や日本を代表するような文化財で対局することに重きを置いて実施しており、今回は世界文化遺産である富岡製糸場で実施することとなった。対局会場を特別な文化財とすることで、話題性の強化、コンテンツの強化を目的に実施した。

<効果>
・世界文化遺産での対局自体が珍しいため、事前の盛り上がりや話題化につながった。
・富岡市としても、ユニークベニューとして活用することで富岡製糸場のよいPRになった。
・単なる貸会場としてではなく、文化財の価値や特徴を生かした活用について考えていくきっかけとなった

<課題>
電源確保や、対局者のお手洗いの確保が課題として残った。

<配慮事項>
開始時と終了時に確認会を行い、注意事項などを全ての関係者に配布。搬入出時は養生をする、単独での作業は禁止など、細心の注意を払いながらイベントを開催することを徹底した。
注意事項の中では、「『日本の文化財を守る』という意識を持つ」よう呼びかけており、単なる禁止事項ではなく、意識を変えていくことを心掛けた。



冊子としてまとめた「文化財を活用したユニークベニューハンドブック」には、ほかにも事例が掲載されています。興味がある方はぜひダウンロードしてご覧ください。今回紹介しきれなかった事例もふんだんに掲載しています。連載の3回目は、来場者が企画にジョインする形式を基本とする「参加型」の事例をご紹介します。


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